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2008年5月30日 (金)

鳴かぬなら

「鳴かぬなら...」で始まる三つの句、有名ですよね、はい、そう

です、あのホトトギスの句です。

織田信長:「鳴かぬなら殺してしまえホトトギス」

豊臣秀吉「鳴かぬなら鳴かせてみせようホトトギス」

徳川家康「鳴かぬなら鳴くまで待とうホトトギス」

天下人となった3人の句のように言われていますが、もちろん、

これは後世の創作です。松浦静山という人が「甲子夜話」という

随筆の中で書いたもの。江戸時代の人ですね。この随筆の中で、

ホトトギスが贈られたのだが、これが鳴かない。その時この3人

がこのように答えたということが、その3人の気性などを考慮し

て書かれたものなのです。

もちろん、この3人に同じシチュエーションで同じ質問をするなん

てあり得ない話ですからね、当然創作なのです。

しかし、どうなんでしょうか?別に歴史マニアでなくても、この句

を知っている人は多い。そういう人から見れば、この句に表れて

いる気性がそのままイメージになってしまうんじゃないだろうか。

信長は比叡山まで焼いた人ですし、家臣に対して苛烈な仕置き

もしたことがある、故に「殺してしまえ」。秀吉は、墨俣の一夜城

のように色々な工夫によって最後は天下人へ、人たらしの天才

ですしね、故に「鳴かせてみせよう」。で、その秀吉が死ぬまで

辛抱強く待った家康故に「鳴くまで待とう」。

幾らなんでも短絡的と思いますねぇ。

この句で最もイメージを損なっているのは信長ではないでしょう

か?何しろ「鳴かないんだったら、殺しちゃうよ~」っていう極端

な性格で描かれています。この句から受ける印象は、とにかく

短気で、恐い人というものだけです。確かに、私も「信長ならあり

得る」と思わなくはないのですが、単なる短気と考えてのことでは

ありません。まぁ、恐い人なのは間違いないけど。

この3人、「信長がこねて、秀吉がつき、家康が食べた天下餅」

と言われるように、戦国時代を天下統一するにあたって一番ハ

ードな時期を乗り切ったのは信長です。秀吉はそれを継いだ形

ですし、家康は更にそれを奪ったわけです。ですから、最も創意

工夫を凝らして、戦国という未曾有の時代に立ち向かったのは

信長なのです。信長がいたから、その家臣であった秀吉も、そ

の同盟者であった家康も天下に手が届いたのです。

その大元である信長は単に短気で恐い人なのか?それでいい

のか?って思うんですよね。確かに短気で恐い人かもしれませ

んが、「単に」ではないと思うのです。

桶狭間の戦いではわずかな兵で奇襲、大軍を打ち破る、しかし

その後は奇襲を殆ど用いず、数の戦をします。彼は自分の領地

に「楽市楽座」~自由に商いを行うことが出来る活気溢れる地を

築くのです。それまでは寺社などに色々金を納めて商売をしなけ

ればならなかった商人たちは、そこへ行きます。結果信長のとこ

にだけ金が集まる仕組みを作り上げるのです。そして、兵農を分

離します。農民は農業に従事し、集めた金で兵を雇うようにする

のですね。早い話兵が死んでも、また新たに流れ者などを金で

雇うのですから、金さえあれば大軍が組成出来る。商人も農民も

幸せで、なおかつ大軍が作れるのです。ですから、もう奇襲の

必要はありませんでした、大抵は。

ところが、所詮は流れ者ですから、戦況が不利と見れば、みんな

逃げ出してしまう弱い軍隊です。ここが武田の兵とは違います。で

すから、強い武田と戦う時には鉄砲を持たせる、それも大量の。

それも金で買ってくるのですね。それ以前にも他の軍よりも長い

槍を使うなど様々な「弱い軍隊対策」を施します。海戦において

は軍艦まで造ってしまいました。

そう、こんな創意に富んだ発想の人なんです、織田信長は。

ですから、「単に」短気で恐い人じゃない。

ですから、「鳴かぬなら殺してしまえホトトギス」と、もし、彼が言う

としたら、こんな意味です。

「鳴かぬなら鳴くのと代えようホトトギス」

彼は、どうしてもホトトギスが鳴かなければいけないのだとしたら、

見事に鳴くホトトギスを草の根分けてでも探し出し、それと代えた

のではなかろうか?もちろん、鳴かないホトトギスは殺されるので

しょうけど。

つまり、「殺す=鳴かせることを諦める」のではなく、「殺す=鳴く

ホトトギスを別途手に入れる」という解釈です。これこそが信長に

ふさわしい考え方じゃないかななんて思います。

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