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2008年6月 6日 (金)

音楽は歴史を超える

はい、過去ブログの再掲載です。

よろしければ。

「歴史は音楽に冷たい」、こんな言葉聞いたことありませんか?

ないですよね、私が作りました、すみません(笑)。
はい、しかし、今日のテーマはこれ。
日本の歴史をざっと見渡しても、中世の、すなわち明治時代になる前の音楽家
というのは殆どその名前が残っていません。いや、正確には残っていたとしても
邦楽を志す人たち以外の者にはその名前が殆ど知られていません。
例えば、絵画の場合、狩野派なんて人たちを聞いたことがありますでしょう?
各々の名前は知らなくても、狩野派という名前は割りと有名。江戸時代になれば
葛飾北斎、安藤広重などもう誰でも知っている名前が出てきますし、教科書にも
ちゃんと載っています。
一方、音楽家の場合、黒川琴古はどうでしょう?
恐らく普通知らない名前ですよね。彼は琴古流尺八の祖です。江戸時代の人で
すが、上記の画家に比べると知名度は低いし、教科書にも載っていませんね。
それ以前だと、誰しも「虚無僧」とか「琵琶法師」の名前は知っていても、彼ら一
人一人の名前は伝わっていません。
実は日本に限ったことではありません。
クラシック音楽の本場ヨーロッパでも同様の傾向があります。
皆さんよくご存知のバッハ。彼は今やクラシック音楽の中でも古典と言われてい
ます。というのも彼が現在のクラシック音楽への礎となる数々の理論を確立した
人物だからです。しかし、そのバッハはいつの人か?1685年生まれです。
ですからクラシック音楽と言っても、たかだか300百年の歴史しかないのです。
しかし、今は西暦2008年。でも、クラシック音楽の歴史は300年なのです。
おかしいですよね。当然バッハの前にも音楽家は多数存在し、音楽は至る所で
愛されていたんです。でも、バッハより前の音楽家の名前となると知らない。もち
ろん、専門に勉強している人は知っているでしょうが、私たちが音楽室で肖像画
を見たのはバッハからでしょう。
それ以前の音楽と言えば、「グレゴリオ聖歌」とか「吟遊詩人」とかかな。こちらも
具体的な固有名詞ではなく音楽自体の名前やそういう人の総称でしか伝わって
いません。日本の「虚無僧」なんかと同様に。
でも、絵画は違います。ルネッサンスはバッハよりも200年も前ですよ。
ダ・ヴィンチ、レンブランド、ラファエロ。みんな有名ですからね。
私はもっと歴史は音楽家の名前を掲載すべきだと常々思ってきましたが、それは
難しいのだと最近感じました。載せようにもあまり伝わってないのだと思いました。
そう、音楽は残っていないのだ。音楽は形がない、だからその「琵琶法師」の演奏
がどれほど凄くても、グレゴリア聖歌がどれほど崇高でも、時代時代に名人と言わ
れた人たちの名前までは伝わらないのだ。名人も死ぬし、名人を生で聴いた人も
死ぬ。後でどんなに凄かったと言われても、後世の人は聴き様がないのだから、
無理もないことなのだと思わざるを得ません。
歴史は音楽に冷たい、これは録音技術が無かった時代だから、そうなったのだと
思います。だから日本の純邦楽について言えば明治以降生まれた人たちが、昭和
の時代になり、名人の域に達した頃からその名前が浸透しています。高橋竹山然
り、宮城道雄然りです。
それに比べると、ヨーロッパは早い。何しろ日本で言うと江戸時代のバッハ以降は
殆ど名前が残っています。それは楽譜があったからでしょうね。録音技術は無かっ
たけど、それを楽譜に残し、学問として後世に伝えたのです。だから後世の音楽家
はバッハがどれほど凄かったかをその楽譜を通して知ることが出来たし、その音楽
を再現することも出来た。そして、そういう体制を整えたのがバッハだった、だから
バッハ以降ということになるのですね。よく「バッハ以前、バッハ以後」と呼ばれる所
以です。
その点絵画はいい。当然修復はしなければならないとはいえ、ルネッサンスの時代
の絵が堂々と残っている。いや、それどころか高松塚古墳の壁画だって残っている
のだから。まぁ、残っているとは言い難い保存状態が口惜しいけど。
時代は変わりました。音楽を残せる時代になりました。
とても幸せなことだ。
でも、本来音楽は手に触れれば消えてしまう淡雪のようなものだったのだ。
その時々で人々を楽しませ、感動させていたのだと思います。その中で名を残すこ
となく死んでいった多くの音楽家がいました。
でも、不思議なことにその音楽だけは残っています。
「虚無僧」が吹いていた尺八、「琵琶法師」が弾いていた琵琶、宮廷で演奏されてい
た雅楽、今でもCDで聴けます。グレゴリオ聖歌も何枚もCDが出ている。
そんな名も無き音楽家の先に自分がいるなどと思い上がったことは考えませんが、
自分が少しでも音楽をやっていることを誇りに思います。
歴史は音楽に冷たい、冷たいが、音楽は歴史を超えるのだ。

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